南アルプスには、その気品ある端正な容姿と白く輝くばかりの白い肌を持つ貴公子が存在するという
その見目麗しき貴公子に一目逢いたいと女王は願った
貴公子に逢いに行くには、果てしない急登が続くドMの喜ぶ黒戸尾根コースか、バスで起点となる標高2030mの北沢峠まで運んでくれるお気楽極楽のコースのどちらかを選ばなければならない
女王は考えた
「甲斐駒ですか?わたくし、黒戸尾根で登ったんですのよ」
なんて言ったら、女王としてのマウントを取れそうな気がするが山頂まで7時間、標高差2197mを登らなくてはならない
途中力尽きて遭難する可能性大
かたや北沢峠からなら、往復7時間で帰ってこれる
しかもバス亭からテン場まで歩いて10分という、垂涎ものの好立地に長衛小屋が存在する
10分なら箸より重い物をもてない女王でも、頑張れば何とかなる
選ばぬ理由がない
深久(深田久弥ね)が絶賛した甲斐駒ヶ岳
「日本アルプスで一番綺麗な頂上は甲斐駒ヶ岳にある」とさえしている
美しき南アルプスの貴公子に、美しき女王が逢いに行く
ああ、なんてロマンチック♡
もうじき女王がまいるぞよ
首を長くして待っておれ!オーホッホ!
夕暮れの築25年の古びたアパートに女王の高笑いが響きわたった
果てしなく遠いみちのり
9:50 茅野駅

10月の3連休が今年最後の運行となる南アルプスジオライナーは、最後の追い込みに駆け込んだハイカーで溢れかえっていた
そりゃ9月のシルバーウィークが雨だったんだもん、ようやくの晴れの連休を待ち望んでいたハイカーが殺到しないはずがない
10:40発の10分前にのこのこ現れたバスの運転手は
「おおっ!これみんなジオライナー乗るの⁈」
と慌てて臨時便の手配をしていた
のんびり過ぎるゾ!
臨時便がでるので、混んでてバスにのれない!なんてことはないことが分かった
積み残しを恐れた女王は1時間ほど早めに来たんだけど・・
11:50 戸台パーク

北沢峠への乗り継ぎとなる戸台パークについてからも大行列
ちなみに矢印が付いてるトラックのようなものは、朝始発便に乗るために用意されたもの
これ、全部ハイカーで埋め尽くされるらしい
恐るべし夏のアルプス(もう秋だけど)
北沢峠
13:10 長衛小屋

バスは定刻通り北沢峠に到着し、大荷物を抱えた大勢のハイカーがぞろぞろと長衛小屋に向かう
地図をあまり見ない女王はみんなのあとをのこのこついていく(これダメ!絶対!)

小屋近くのテント場は既に埋め尽くされてた
長衛小屋から少し離れるた場所に寝床をこしらえる
最近歳のせいか夜間頻尿なので、トイレから離れるのはちと心配だがまあ仕方あるまい
貴公子に逢うためには多少の困難はつきもの
それよりお楽しみはこれから
普段は軽量化のため、食料も抑え気味にしてるが、何せバス停から歩いて10分のテント場
半分以上食料で埋め尽くされたザックに女王はほくそ笑む
今宵は貴公子に逢うための前夜祭じゃ!
心行くまで楽しもうではないか

祝杯をあげている間にいい時間になったので、いそいそと夕食の準備にとりかかる
今宵の晩餐はカレーうどん!(地味)
普段料理のできない女王であるが、豚肉を炒めてカレーうどんの素をぶち込めば誰でもできるので簡単!
はあ~、山で食べるうどんは最高よのう(今日一日ただ飲んで食べただけ)
これぞ山の醍醐味
満足じゃ!
そして食べたら寝る
おやすみなさい
長衛小屋 登山口
4:40 長衛小屋

昨夜満腹状態で寝た女王は少々胃もたれ気味だが、そそくさと朝食を済ませ出発の準備を整える
朝4時半にはすでに多くのハイカーが集まっていた
皆の衆は早起きよのう
いざ出陣じゃ!

長衛小屋の前にある橋を渡ったら、仙水峠の方向に向かう
しばらくは、川沿いを緩やかに上がっていくので寝起きの体ににやさしい
5:10 仙水小屋

仙水小屋にはテン場もあり、何張か張られていた
静かな場所を好む人向け
女王なら、徒歩10分を選ぶわ~


開けてくると、ガレガレ地帯
女王が若かった頃、サントリーの南アルプス天然水のCMで宇多田ヒカルが張り付いていた場所
女王はそのころ登山なんてこれっぽっちも興味なかったから、CMみてもなんの感慨もなかったけど


おお!
ウオールマリアの壁から顔を覗かせる巨人(摩利支天ね)
き、巨人に見えた・・
いきなり現れるんだね・・
仙水峠
5:48 仙水峠

仙水峠についたタイミングで、日の出
このタイミングを待っていた方が、「いいタイミングで来たね」と満面の笑顔で迎えてくれた

赤く染まる貴公子

赤く輝く杜


向かいに見えるのは粟沢山
その奥には、オベリスク
朝日を浴び、世界が輝きを増していく
女王はこの瞬間が大好きだ
国政に忙殺される日常を忘れられる
ああ、やっぱり山に来て良かったなと・・

誰じゃ!
使い捨てスリッパ落としていったの!!
いきなり日常に戻された・・・
しかも何故スリッパ?

まあいい、気を取り直して駒津峰に向かおう
駒津峰
7:01 駒津峰


駒津峰は開けていて、たくさんの民が休憩していた

貴公子がその全容を表す
ほう!
なんてゴイスーなお姿・・・(語彙力)
ちなみに右側の丸っこいのが、さっきの巨人ね

駒津峰を過ぎると、トレイルはいきなりワイルドに
女王はビビりだが、こういう場所嫌いじゃない♡

イワイワしたトレイルが続く

貴公子の山肌が目前に
赤や黄色の衣をまとい、衣替えの季節になったようだ

鎖場もいくつか出てくるが、鎖は補助程度でそれほど難しくはないかと
けどちょと激しめ

巨大な岩が現れたら
7:36 六方石

な、なんと平たい・・(語彙力)
この平たい岩の横をすり抜けて進みます
地図を見ると六方石というらしい(たまには地図を見る)
四角だからはじめ六方石とは思わなかったぞい(六方体ということらしい)

遠目でみるとこんな感じね
これは落石した岩がここで止まったのかね?
山に来ると、こういった不可思議なものをよく目にする
金峰山の五丈岩なんかも、あれどうしてああなったんだろう?
直登ルート・まきみち分岐

六方石を過ぎるとすぐに直登ルートとまきみちルートに分かれます
直登ルートは岩登りになるということは事前に調べていた(たまには調べる)
ここは直登ルートを選択
ビビりのくせにこういうルートを使いたくなる悪い癖
険しさの先に貴公子が待っているのだ

赤いペンキで『直』って書いてあるのが潔くてよろしいぞ

直登ルートは大きな岩が積み重なる場所を、手足を使ってよじ登っていく
段差が大きく、全体を通して鎖は少ない印象
途中、どでかい段差の岩場が出てきた(頼みの鎖もない)
あれっ?
登ってみるも、女王の短い足ではにっちもさっちも届かない・・
はて、どうしたものか
この壁がのぼれない・・
来た道を戻って巻き道コースも考えたが、このコースをくだるのは危険
ならばと膝をひっかけてみる
ぐっつ
くぬおお~!!
そのまま腹ばいになり、ずりずり押し進む(貞子?)
の、登れた!
それにしてもすごい恰好でおじゃるな・・・
高貴なうまれなのに・・


苦難の道は続く
見上げるとはるか頭上に貴公子が微笑んでいた
『女王よ、カモ~ン』
ま、待っておれ!
女王はもうじきじゃ!
そしてまだまだ登る

あの白い斜面は巻き道ルート

振り返るとこの絶景

岩登りとこんな道を繰り返して頂上に向かって詰めていく

ここまで来るとイワイワ地帯は終盤
ルートを外さなければ、身の竦むような高度感のある場所や切れ落ちた滑落したら詰むような場所は無い(と思う)
とにかくペンキマークを見逃さない事じゃ!

左に見える斜面が荒々しい

最後にここを登れば岩場は終了(斜度はきつくない)

あの竜の背みたいなところを登ってきたのだ
こうして見るとよく来れたな

あとはザレザレ地帯を登って行くだけ


足元はこ~んな感じ
このザレ地帯が厄介で、岩場より嫌らしかった気がする
とにかく滑る


砂浜のようなまきみちルートは穏やかそうに見える
下山で使う予定

もうすぐ頂上
甲斐駒ヶ岳
8:20 甲斐駒ヶ岳山頂


つ、ついた・・・
お気楽極楽コースを選んだはずなのに、度重なる困難に女王はすでに虫の息であった
しかし、その美しき頂にとうとう立つことができたのである
思えば長く険しい道のりであった
正に感無量とはこのことよ
そして山頂からは、遮るもののない360度の大絶景が待っていた
さあ皆のもの!見るがよい!

左には『鳳凰三山』と『富士山』 右に見えるは『北岳』『間ノ岳』

『仙丈が岳』とその奥には『中央アルプス』

『鋸岳』と奥に槍のシルエットと大キレットが見える『北アルプス』

『八ヶ岳』

タンクトップ登山家 『穂高』
とても感じのいい殿方であったw
ファンが多いのも頷ける

絶景を堪能し満足した女王は、ここまでの試練ですっかり胃もたれが解消したのでパンを食べる
昔「パンがなければお菓子を食べればいいのに」と言って飢餓に苦しむ庶民の反感をかった女王がいた
米が高騰し、庶民が生活に苦しんでいる時「米が高いならせんべいを食べればいい」と本気で考え、結果家計を圧迫した女王がいた(私だ!)
女王は頭が足りないから、小学生でもわかる簡単な計算ができなかった
いつだって上にたつものは世間知らずなのだ
だって、米が高騰してもおせんべいの値段はかわらなかったんだよ~
下山
8:58 下山開始

名残惜しいが仙流荘でお風呂と食事(行のチケット購入時、唐揚げ定食があるのをしっかりチェックしていた)をしたいので、13時5分のバスに乗るためそろそろ下山とする


このザレ場がめちゃくちゃ滑った!
白さの正体はザレ場地獄
ところどころ赤いマーキングがあるが、ここはどこを進む?と思った瞬間足元を掬われそのままオケツより滑り落ちた・・
振り返ると女王のあとに続いていた民も滑り落ちていた
何故同じ場所を歩く?

目の前に摩利支天
行こうか迷ったが、女王はこのザレ道を歩くので精一杯!
また滑り落ちそうなのでパス

六方石が見えてきた!
分岐からは駒津峰に戻り双子山経由で北沢峠に

双子山には手前に見える稜線を降りていくようだ
10:01 駒津峰


駒津峰からは一旦鋸岳方面に進路を取り

仙丈が岳方面に向きを変える
真ん中の山が双子山

だいぶ降りてきた
こっちのルートは荒々しさもなく、見える稜線が穏やか
が、双子山への登り返しが待ってる(返して!戻して!稼いだ標高!!)

双子山には、なんの変哲もない樹林帯(失礼)を登って行くが、途中に携帯トイレ使用ブースあり
この日は10年に1度の高気温で、水分すべて汗になったので頻尿気味の女王は使用せずに済んだ
双子山
10:35 双子山

やっとこさ辿り着いた山頂は
眺望があるわけでもなく・・

唯一登ってきたみちから振り返った貴公子が素晴らしかった
貴公子よ、さらばじゃ

こんな道がずーっと続く
眺望は全くありませ~ん
蝶が岳から横尾へ続くみちに似ている(飽きた・・)
11:43 北沢峠


や~っと戻ってきた
あとはテントを撤収してまた戻ってくるだけ
が、ここで女王は反対側に10分ほど進み間違いに気づく
行きでなんも考えずにみんなのあとを付いていったから、長衛小屋の方角が分かっていなかったのだ
慌ててきた道を戻りテントを撤収、バス待ちの列に並ぶ
この日はラッキーなことに、ある程度乗客が揃うとその都度臨時便を出してくれた
確かにこうでもしなきゃこの大人数乗せきれんわな
13:40 戸台パーク

入浴を済ませ、さっぱりした女王は狙っていた唐揚げ定食を食べようとカウンターにむかう
だが、ここで驚愕の事実を目にする
まさかのランチタイム終了
な、なせじゃ!
オフィス街でもあるまいし、なぜランチタイムが存在する?
これから腹を空かせたハイカーが続々と運ばれてくるのに!
何の為に1時台のバスで来たとおもっているのだ!
バスに乗るまでの長い時間を、せんべいを食べサービスの渋茶を啜りながらやり過ごす

17時発茅野駅行が最終となるジオライナーは相変わらずの長蛇の列
女王も入浴する前にしっかりザックは並べて置いた
バスは順調に進み18:10には茅野駅に
バスが着くや否や女王はバス停の反対にある蕎麦屋に駆け込む
が、ここでもう閉店だからとあっさり追い出される
ならばと、駅ビル「ベルビア」の飲食店を目指すもピザ屋以外はどこも閉店
な、なぜじゃ!
この日は三連休の中日 、なのに19:00前で閉店⁈
そもそも長野県民は稼ぐ気がないのか!
今は、ピザなどとパサパサしたものは食いとうない!もっとジューシーなものが食いたい!
うろたえた女王は「駅なら立ち食いソバがあるはずじゃ」と茅野駅に
そこでは腹を空かせたハイカーが行列を作っていた
む~!またもや行列!
絶望の女王はしぶしぶ並び、かき揚げそばを注文
駅蕎麦の厨房は押し寄せたハイカーで大忙し
が、女王は見逃さなかった
女王が注文したかき揚げ蕎麦
バイトのお兄ちゃんがおもむろに冷蔵庫からかき揚げが大量に積まれたタッパーを取り出し、レンチンするのを
揚げんのか~い!
サクサクの衣を期待していたのに、出されたかき揚げは既にふにょふにょでさらに汁気を吸ってドロドロにふやけて箸で掬っても崩れ落ちた
女王は泣いた
本来なら貴公子に逢えた喜びをサクサクジューシーな唐揚げとともに噛みしめるはずだった・・
ご満悦な夜で締めくくるはずだった・・
涙で蕎麦がしょっぱいよ
おわりに
駅からの帰り道、コンビニで好物の豆大福を購入し祝杯を挙げた
翌日、糖尿病予備軍の女王は体重計にのり悲鳴を上げる
う、うそでごじゃる・・
あんなに頑張ったのに・・・
体重はまさかの1,5㎏増
そう、いつだって努力は報われないのだ
体重計の上で呆然とする猫背気味の背中が哀しかった
おわり
コースタイム
2026/10/10(土)~11(日)
総距離 8.2㎞
かかった時間 7時間3分 (休憩42分含む)
登り 1144m くだり 1096m
4:40 長衛小屋
↓
5:09 仙水小屋
↓
5:48 仙水峠
↓
7:01 駒津峰
↓
7:36 六方石
↓
8:20 甲斐駒ヶ岳
↓
9:40 六方石
↓
10:01 駒津峰
↓
10:35 双児山
↓
11:43 北沢峠
↓
12:00 長衛小屋
消費カロリー 1416kcal
摂取カロリー 堅あげポテト333kcal、チョコマカダミアクッキー(ファミマのこれ美味しい!)285kcal、うどん282kcal、カレーうどんの素59kcal、昆布煮56kcal、ワサビスナック121kcal、豚肉(150g)372kcal、缶チューハイ91kcal、ビール147kcal、尾西のわかめご飯361kcal、牛乳パン498kcal、グミ143kcal、
合計2748kcal(下山後の食事は含まず)

かき揚げ蕎麦(茅野駅にて)

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